ヒュースケン日本日記

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ヘンリー・ヒュースケン著/青木枝朗訳「ヒュースケン日本日記」読了。岩波文庫。

 ヒュースケンは江戸時代末期のオランダ人。米のタウンゼンド・ハリス(日米修好通称条約に尽力し、後に初代駐日公使)に雇われ、1856年に来日して通訳として活躍。1861年にローニンに襲われ28歳で死去。

 本はアメリカ出発から始まり、310ページのうち、序盤の130ページは日本到着までの喜望峰やモーリシャス島、バンコク、香港に寄港した時の記録などを描いています。

 挿絵は豊富にあり、ほとんどが西洋画家によるものですが、数枚はヒュースケンの自筆。それから元箱根の街道沿いを写した写真もありました。個人的にはあの辺かなと思い浮かぶところがあって実感があり、おもしろい感じです。

元箱根写真
▲元箱根の写真

 前半は詩的なところもあったりして私日記らしい。日本についてからは忙しくなった所為か日記というよりも記録という風味が強くなってきています。

 意外だった場面は初めて富士山を見た時のもの。

私は感動のあまり思わず馬の手綱を引いた。脱帽して、「素晴らしい富士ヤマ」と叫んだ。

 やはり富士山の美しさというのは万国共通、かつ時代を問わず、うったえるものがあるのだなあと思いました。富士山の賞賛がたっぷり2ページ(笑。

 箱根を超えた江戸ではハリスとともに将軍に謁見したりしつつ、のらりくらりとした日本側の「委員」との交渉をこなしていく過程がえがかれています。

 終盤では上司であり身近な同胞であるハリスが重病におかされ、臨終の言葉を交わすシーンも印象的。結局ハリスの病状は回復するのですが、他の部分では飛び飛び日記になっているのに対して、やはり1日日記としてしっかり書いてあったりします。

 全体的にはその名前のとおり「日記」であり、物語的な起承転結が激的に描かれているわけではありません。なのでエンターテイメントとして期待して読むとちょっとつまらないかもしれません。もちろん部分的には日常の事件や日本についての感動や驚きといったものは描かれていますが、ある程度は時代背景やハリスの性格・交渉姿勢などを知っているほうがフムフムとなる、ちょっと上級者よりの読み物と言えるかと思います。

 もっとも印象に残ったのはタイクーン(13代将軍・徳川家定)との謁見の直後に書かれている、

日本の宮廷は、たしかに人目を惹くほどの豪奢さはない。廷臣は大勢いたが、ダイヤモンドが光って見えるようなことは一度もなかった。

から始まる下り。鎖国を切り開いたハリス(とヒュースケン)の将軍謁見という光景から自問自答が始まり、先進国からの素晴らしい「文明」という光が日本に差し込むことを賛美した後、「この文明は本当にお前(日本)のための文明なのか」と問う。

 その続きについては実際に読んで欲しいですが、要するにヒュースケンは300年間近く鎖国という閉じこもりを続けてきた日本という1つの世界が終わる、その実感をその謁見の間において感じ、記したのだと思います。

 時代は進み、古きは置き去られるのは必定ですが、その大きな転換期を見て、感じた言の葉は非常に心に迫るものがありました。

 全体に淡々とした調子ではありますが、時代の大きなうねりを感じたい人におすすめしたい一冊でした。


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